乳腺を取っ払って胸を平らにするべく福岡で胸オペ(乳房切除)を受けてきた30歳のオナベの記録。
どうも、30になったら流石に自分におっぱいがついてるのが(色んな意味で)キツくなってきたオナベのカナタっす。
胸オペ自体は子供の頃からしたかったんだけどね。
最初は「診断とか受けて、時間かけてできれば保険適用で40までにやろう」とか思ってたんだけど、意を決してなけなしの勇気を振り絞って連絡をしたジェンダークリニックからクソみたいな一文メールを返され、無性に腹が立ち、「もう知らん!美容外科で即行取ったるわ!どうせ仕上がりも若いうちの方が綺麗だし!!」と思い、そのまま近場の美容外科を予約したのであった。勢いって大事。
実は胸オペで美容外科に行くのは2件目
胸オペの存在を知った2〜3年前、いてもたってもいられずXジェンダーの人の胸オペ体験談に書かれていた美容外科(今回とは別のところ)に突撃したことがある。
が、当時の自分は
地方から関東のクリニックまで乗り込む程度には「おっぱいのない体になりたい」という欲求を抱きつつも、
まだ自分の性自認を胸を張って主張する度胸も、
20代の女体のおっぱいとお別れする覚悟も、
今ほどのコミュ力も、計算高さもなかった。
結果的に「ウチで胸オペしたかったら診断書持ってこい(意訳)」と追い返されたのである。
(一応先生の名誉のために言っておくと俺の未来を心配しての言葉だったし、迷いの最中にいる当時の俺には多分それが最適解だった)
その後近場のドラッグストアで買い物しながら泣いた。
勢いだけで全てうまく行くとは限らないのである。
緊張と恐怖で死にそうだった待合室
胸オペしようと思い立った時には「目の手術だってしたし胸オペも余裕でしょ」と余裕こいてたんだけど、
診察前日の夜から体験談を読み漁ってたら無性に怖くなり、
クリニックに着いたときには1回目の悪夢のことも相まって、
緊張と不安で心の中はまさに暴風雨。俺吹き飛ばされちゃう。
やっぱ止めとこうか!?
逃げるなら今か?!?
胸を取ろうなんて俺なんかには大それたことだったんじゃないか??!?
本当にこんな恐怖と痛みを超えてまで胸を取りたいのか!?!?
みたいな。
いや落ち着け、今日手術するわけじゃない。
話を聞いてからやるかどうか決めてもいいし、ここで逃げたら一生おっぱいは取れん。
そう言い聞かせながらじっと耐えた。
ちなみに前回の反省を生かし、出来るだけメンズに見える服で武装して行った(普段のオシャレ着と何も変わらんけど)。
問診受けてたら落ち着いてきた
なんとか自分の番が来るまで暴風雨を耐え切って診察室に呼ばれると、カーテンで区切られた診察台のあるスペースに通された。
上半身裸になって待ってて下さいと言われ、脱ぐ。
そしておっぱい丸出しのままカーテン越しに問診が始まった。
最初は看護師さん(かな?)から、問診票に書いたようなことプラスアルファを尋ねられる。
色々聞かれてドキドキしたけど、性自認について突っ込まれることはなくて安心した。俺の中の暴風雨も傘をさしていられるくらいまでおさまった。
穏やかすぎる先生の登場
看護師さんとのカーテン越しの問診を終えると、先生がカーテンの中に入ってきた。
少しだけ胸を触診し、エコー取ったら半裸タイム終了。
真っ先に「乳輪の周りを少しだけ切る術式で大丈夫そう」と伝えられて一安心。
術式によって傷跡も金額(こっちのが重要)も大きく変わってくるから。。。
そして次に「乳腺はね、ホルモンを出すところじゃなくて受け取るところだから、取っても体は何も変わらないんですよ。もちろん授乳はできないけど、ミルクがあるから必須じゃないですしね」と言われ、
あっ、この先生は俺と同じ考え方する人だ
と思って割と嬉しかった。もう雨止みそう。
その後先生が色々と手術について説明してくれた。
事前に不安に思ってたことをピックアップして書いておく。
乳首の壊死
胸オペ後の合併症として一番聞くのが乳首の壊死。
乳首は乳腺に繋がってる器官だから乳腺を摘出するとどうしてもダメージを受けるんだって。
俺はあんまり乳首に未練はないが、一応壊死したらまた作れるらしい。
乳輪の壊死
乳輪の周りを切開する関係で、どうしても血流が悪くなって壊死することがあるらしい。
俺の術式の場合は乳輪の下半分の半円形。
確かにそういう壊死の仕方してる人見かけるね。
壊死したら乳輪がカサブタみたいになって剥げて色がなくなるって聞いて、(えっ、乳輪って普通の皮膚の上に乗ってんの???)って思ったけど訊かなかった。こんなとこで知識欲出してどうする。
ちなみに壊死したら刺青で色入れるんだって。
ふぅ〜ん(乳輪にもあんまり未練がない)
壊死の確率
結構頻繁に乳首壊死するのか訊いてみたら、「10人に1人いるかいないかくらい」らしい。
先生的にはそんなに高い確率じゃないっぽいけど、5〜10%てなかなかやぞ。別にいいけど。
皮膚のたるみ
皮膚は縮むから、基本的に術後1年くらい様子を見てから余分な部分を取るそうで。
手術と同時に取っちゃうと無理に引っ張られて乳首や乳輪が壊死しやすいらしい。
俺の場合は左おっぱいが若干下垂してるからもしかしたらたるむかも?って言われた。
ほとんどノーブラで生活してるのにちょっとだけなのかと逆に感心。
麻酔
点滴による全身麻酔らしい。
ちゃんと専門の麻酔医の先生が来てくれるそう。
一番怖いのが麻酔による事故だから専門家が来ると聞いて一安心。
サイトには硬膜外麻酔って書いてあったんだけど、いくつかの地域にある病院だから場所によって違うのかな。
硬膜外麻酔の人の体験談なんか色々痛そうだったから俺的には全身麻酔の方がありがたい。
大きな事故
「今のところは、っていう言い方しかできなくて申し訳ないけど無いですね」だそうで。
乳腺は体の外側にくっついてる器官だから胸(おっぱいじゃなく肺や心臓がある方)とかお腹切って開けるより危険度は低いんだってさ。
圧迫バンド
手術の後につけるアレ。
病院によってつける期間まちまちで、長いとこだと1ヶ月とかだっけ?
おブラもしんどくて着けられんのにそんなにつけてられるかな〜〜って思ってたけど、ドレーン取れた翌日まででいいらしい。
ドレーンは最短で手術の翌朝取れるから、バンドも最短3日。すごい!
出血が長引いたら何日か伸びるかもって。
そういえば手術の時間の大半は止血なんだってさ。
特別尋ねなくても色々教えてくれて、コミュ障なくせに知識欲の権化のオラは楽しかったよ。
色々説明聞いて、こっちからも聞きたいこと質問した後、先生はもう一度「乳腺なくなっても、体も将来的なこと(子作りとか)も大丈夫だよ」的なことを言ってくれた。
自分でもわかってるし、だからこそ最小限に胸オペだけやろうと決めたんだけど、やっぱり不安は不安だったからこう言ってくれる人がいると凄くありがたい。
先生は小さめの声と柔らかい口調でゆっくり丁寧に話してくれる人で、俺的にはすごく相性がよかったし、この人になら任せたいと思えた。
先生との話が終わった頃には、俺の心の暴風雨はすっかり止んでいた。
支払いについての説明
先生が去った後、受付のお姉さんが来て支払いについての説明を受けた。
ローンかカードか振り込みが選べたけど、安い方の手術で済んだのでカードか振り込みにしますと伝えておいた。
いい値段だしカードで払ったらポイントついて美味しいけど、もし通らなかったら怖いな。。上限額確認しとこう。。
採血と手術のオリエンテーション
支払いの説明が終わったら看護師さんとバトンタッチして、麻酔のための血液検査用に採血。なんであれ何回やっても慣れないんだろうな。。。刺さるまでがめっちゃ怖い。
「今日手術するわけじゃないのに待合室にいるときめっちゃ怖かったんですよ〜」って言ったら、「分かります〜今日じゃないのにね」って言ってくれて和んだ。
採血中刺されてるとこを見ないように視線外してたんだけど、豊胸も乳腺切除もどっちもやってるクリニックで診察室も共用だから、部屋の中に豊胸する量を決める為の見本みたいなの並べてあって面白かった。
実際に中に詰めるやつも見せてくれた。
ポヨポヨしてて気持ちよさそうだった。
採血が終わったらそのまま手術の日の流れを説明してくれた。
俺的には「点滴がちょっと痛いかもしれないけど寝てる間に尿道カテーテル入れるのも手術も全部終わる」って聞いてかなり気が楽になった。
あとは「術後に背中から入れる麻酔が少し気持ち悪いかも?」とも言ってた。こっちが硬膜外麻酔かな。
後はスケジュールを決めるだけ!
一応生理が来るか確認しておきたい(2年不妊で現在自然妊娠待ち)のと、オペ可能な直近のスケジュールがまだはっきりしてないので、日程は決めずにとりあえず帰宅。
採血も済んでるから後は電話予約だけ。
ついに。。ついにか。
心配事が全くなくなったわけじゃないけど、クリニックの人たちがみんないい雰囲気の人で、ここなら安心してお願いできるなーと思ったのであった。
胸を取って生きていくことに全く不安がないかと言われれば嘘になるが、「おっぱいがあっても許せなくはない日」が来ることはあっても「おっぱいが無いのが耐えられない日」は絶対に来ない。
そう、アレソレが怖いだけでおっぱいを取りたい気持ちに間違いはないのだ。